どの辞典を手繰っても、「橋」とは人間が交通や流通の発展のために架けた構造物として定義されている。しかし、人の手など借りずに自然の営みによって生まれたものが世界には散らばっているのだ。そのスケールや景観の素晴らしさから、代表格とされる天然橋を紹介したい。

個性溢れる三つの橋を堪能できる天然橋エリア
Natural Bridges National Monument
ナチュラルブリッジズ国定公園〈アメリカ〉

画像: ユタ州モアブ周辺は全米きっての光害のないエリアとしても知られており、オワチョモブリッジごしの星空を眺めることができる

ユタ州モアブ周辺は全米きっての光害のないエリアとしても知られており、オワチョモブリッジごしの星空を眺めることができる

 奇岩や天然のアーチの多さでも知られるアメリカ・ユタ州は、天然橋が林立するエリアだ。その中でもオワチョモ、カチナ、シパプと3本の橋があるナチュラルブリッジズ国定公園は有名だ。当地の晴天率の高さも相まって「普段忘れていた宇宙との結び付きを確認できる場所」として、青空や星空を含めた景観が堪能できる。特に「盛り上がった岩」という意味のオワチョモブリッジは、3mほどの厚さに対して55mの全長を誇り、細長く見えることから首長竜(プレシオサウルス)の愛称も付けられ、ランドマークとして親しまれている。

ACCESS
ロサンゼルスからユタ州のソルトレイクシティ国際空港まで飛行機で約2 時間。レンタカーやチャーターバス、シャトルバスでのアクセスが一般的だ。

欧州最大の天然橋は空想世界への入り口
Prebischtor
プレビッシュトアー〈チェコ〉

画像: 全長26m、高さ16m、幅8 m。チェコとドイツにまたがったチェスケーシュヴィーツァルスコ国立公園内にある

全長26m、高さ16m、幅8 m。チェコとドイツにまたがったチェスケーシュヴィーツァルスコ国立公園内にある

 欧州最大の天然橋がチェコのプレビッシュトアーだ。風雨の浸食が巨岩に大きな穴を穿うがち、そこがアーチ状になり、別名「プラフチツカ・ブラーナ」(石の門)と呼ばれる形状になった。深い渓谷と色濃い針葉樹に囲まれたロケーションは、映画『ナルニア国物語』の舞台にもなったように中世ヨーロッパ風のファンタジーの世界のようだ。橋を渡ると、別世界に足を踏み入れてしまったかのような空想旅を楽しめるのだ。また、どこか懐かしい雰囲気をまとっているのも魅力といえるだろう。

ACCESS
首都プラハのヴァーツラフ・ハヴェル・プラハ国際空港からジェチーン駅へ鉄道で約1 時間半。ジェチーン市街からバスで約30分。

世界でも類を見ない石灰岩の天然橋
Onbashi
雄橋〈日本〉

画像: 全長90m、幅18m、厚さ24m、川底からの高さは40m。かつては備後路を往来する街道として馬や籠も通っていたとか

全長90m、幅18m、厚さ24m、川底からの高さは40m。かつては備後路を往来する街道として馬や籠も通っていたとか

 欧米とは異なった、独特な景観を生み出しているのは日本を代表する天然橋・雄橋(おんばし)だ。巨大な石灰岩が帝釈川(たいしゃくがわ)の渓水によって長い歳月をかけて浸食され、貫通して一部分が橋として残った世界でも珍しい石灰岩の橋だ。川をまたぎ、流通を容易にしたことから「神橋」と呼ばれていた。その神秘的なたたずまいから、鬼が架けたという伝説もかつてはあったそうだ。

ACCESS
JR芸備線東城駅から備北バスで約25分、帝釈下車徒歩約30分。中国自動車道東城ICから約10㎞、尾道自動車道甲奴ICから約40㎞。

 それぞれ趣の異なる雄大な眺めを持つ天然橋だが、悠久の時が生み落とした自然の芸術であることは共通している。また、いつ浸食や風化で崩れてもおかしくない奇跡の絶景だ。その儚くも美しいたたずまいを、橋上から、下から、あるいは遠景と、さまざまな角度から楽しみたい。

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