まばゆい夜景、どこまでも続く澄んだ海、建築家によるモダンな建物……。このような陽性の絶景とは一線を画し、人の営みからは決して切り離せない、荘厳な絶景がある。それが墓地だ。

無数の木彫り人形が並ぶ少数民族の死生観
Carved Stone Grave of Tana Toraja
トラジャ族の岩窟墓〈インドネシア〉

画像: 1970年代半ばまでは観光客に知られぬ未知の土地だったことが、独自の死生観を保つ大きな要因。現在は観光客を積極的に誘致している

1970年代半ばまでは観光客に知られぬ未知の土地だったことが、独自の死生観を保つ大きな要因。現在は観光客を積極的に誘致している

 300を超える民族が生活する多民族国家・インドネシア。古い文化や習慣を現在に伝える民族も多く、特に南部スラウェシ島のタナトラジャに住むトラジャ族は、死者との別れは永遠のものではないという独特な死生観を持つ。彼らにとって死は人生の中で最も重要な節目。壮麗で盛大な葬儀を執り行った後、遺体は巨岩を削って作った横穴、岩窟墓に安置される。その岩窟墓の入り口には死者の生前の姿を模った「タウタウ」と呼ばれる木彫り人形が祀られ、死者を守護し続ける。信仰の強さがみなぎる巨岩と、そこに置かれるタウタウの様子を見ると、まるで一つの村が形成されているような不思議な感覚に陥るだろう。

ACCESS
南スラウェシ州の州都マカッサル郊外にあるハサヌディン国際空港から市街地へ。そこからツアーに参加するか、長距離バスでタナトラジャへ約8 時間。

エキゾチックな雰囲気に酔いしれる
Tower of Silence
沈黙の塔〈イラン〉

画像: 現地ではペルシア語で「ダフマ」と呼ばれる。1930年代にイラン国内では鳥葬が禁止された。現在はかつての鳥葬の場所を見学できる

現地ではペルシア語で「ダフマ」と呼ばれる。1930年代にイラン国内では鳥葬が禁止された。現在はかつての鳥葬の場所を見学できる

 世界最古の一神教とも考えられているゾロアスター教の葬送である「鳥葬」の施設が、イランのヤズドにある沈黙の塔だ。教徒にとって火や水や大地は神聖なものであり、人の死によって自然を汚すことのない方法として、鳥葬が選ばれた。砂漠の土埃や、むき出しの山肌に同化するようにそびえるその姿は「人が自然に還る道」としての在り方を雄弁に語っているかのようだ。塔に登り実際に使われていた現場を目にすれば、信仰と歴史の一端に触れることができるだろう。

ACCESS
イラン中央部、ヤズド州の州都ヤズドの市街地から路線バスで約30分。

70 万体を超える死者が眠る墓のマンション
Civic Cemetery in Guayaquil
グアヤキル市民墓地〈エクアドル〉

画像: 70万体を超える遺骨が保管されている。敷地内外では、かなりの確率で葬列に出くわすという

70万体を超える遺骨が保管されている。敷地内外では、かなりの確率で葬列に出くわすという

 それらと対照的なのが、エクアドル最大の港湾都市グアヤキルの市民墓地だ。1823年に創立されたこの市民墓地は、人口300万人を数える過密都市らしく、合理的かつ画期的だ。高さ10m幅20m、マンションの一室のようなサイズの共同墓室をシェアする形で遺骨が並ぶ。墓室の数は数百にもおよび、計70万体の遺骨が収容され、墓のマンションとも呼べる集合体だ。それでも決して淡白な印象を受けないのは、一室ごとにイラストなどで扉や内部がデザインされており、遺族の死者への思いが推し量られるからだろうか。現在も墓地は拡大中だ。

ACCESS
グアヤキルのホセ・ホアキン・デ・オルメード国際空港からタクシーで市街地へ。そこから、路線バスやタクシーで約10分。

 いずれの奇観も、死者への畏怖や鎮魂を込めた美しさをたたえている。今後も、それぞれの民族の習わしとして受け継がれるに違いない。

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