本誌第11号で欧州、第27号で北米の山岳鉄道を取り上げたが、今回は南米編だ。欧州や北米の静謐な景色に比べ無骨な秘境といった色合いの強い、冒険路線というべき言葉がぴったりな南米の山岳鉄道を紹介したい。

古都と空中都市を結ぶ、時空を超える旅
Peru Rail
ペルー・レイル〈ペルー〉

画像: 切り立った東アンデス山脈の峰々が迎えてくれる。旅情を盛り上げる車内BGM は『El Cóndor Pasa』(コンドルは飛んで行く)だとか

切り立った東アンデス山脈の峰々が迎えてくれる。旅情を盛り上げる車内BGM は『El Cóndor Pasa』(コンドルは飛んで行く)だとか

 まずは、ペルー・レイル。インカ帝国の都だったクスコを起点に世界遺産マチュピチュへ向かい、800mもの標高差を誇るアグアスカリエンテス路線だ。南米で2番目に高い場所を走る鉄道としても知られているこの沿線では、万年雪を冠する霊峰ベロニカ、大河アマゾンの支流のひとつウルバンバ川、その川沿いに遺跡を残すウルバンバ渓谷といったアンデス特有の絶景に数多く出会える。車内で提供される軽食と飲み物を楽しみながら、古都から空中都市までの約4時間の時空トリップに身を委ねたい。

ACCESS
クスコのアレハンドロ・ベラスコ・アステテ国際空港からタクシーや乗り合いバスでクスコ市内のポロイ駅まで約30 分、雨季はオリャンタイタンボ駅まで約1 時間40 分。

南米一の標高差3000m を誇る雲上に浮かぶ山岳鉄道
Tren a las Nubes
トレン・ア・ラス・ヌベス〈アルゼンチン〉

画像: サルタ駅を朝7 時に出発し、アンデスの高みを目指す。運行は4 月上旬から12月上旬の毎週土曜日

サルタ駅を朝7 時に出発し、アンデスの高みを目指す。運行は4 月上旬から12月上旬の毎週土曜日

 スペイン語で「雲の列車」という意味のトレン・ア・ラス・ヌベスは、アルゼンチンで元々は1941年に鉱物の運搬を目的に拓かれた山岳鉄道だ。その後、荒涼たる大地を走り、ループ、スイッチバックを繰り返し標高4200mに向かうルートは観光鉄道としても魅力的だと評価を受け、1972年に観光列車として運行を開始した。車窓には沿線を闊歩(かっぽ)する高山動物のリャマ、さまざまな形のサボテンなど、ここでしか出会えない風景が続く。3000mという南米一の標高差のため、車内には看護師が待機し、各車両には酸素ボンベが配備されているのも、他の路線にはない大きな特徴だ。

ACCESS
サルタのサルタ・マルティン・ミゲル・デ・グエメス国際空港からシャトルバスで市内へ。市内にあるサルタ駅から乗車。

世界遺産の大森林地帯を駆け抜ける「緑の山の特急」
SerraVerde Express
セーハ・ヴェルジ・エクスプレス〈ブラジル〉

画像: 熱帯雨林特有の高い湿度で、高い確率で列車は靄に包まれる。雲海が拝めるのも人気の理由だ

熱帯雨林特有の高い湿度で、高い確率で列車は靄に包まれる。雲海が拝めるのも人気の理由だ

 トレン・ア・ラス・ヌベスが雲の中を登るなら、ブラジルのセーハ・ヴェルジ・エクスプレスは、雲海を突き抜けて走る列車だ。標高約900mのパラナ州の州都クリチバを出発した列車は、グラシオーザ高原の常緑原生林や熱帯雨林を縫うように進む。目に鮮やかな濃い緑と大森林の草いきれ、薄く立ち込める靄が頰に触れ、野生動物の声が耳元で聞こえる。車窓からの風景を五感すべてで体感できること請け合いだ。

ACCESS
クリチバの最寄りのアフォンソ・ペーナ国際空港から、市営バスや民営の空港シャトルバスで市内へ。中心部のクリチバ駅から乗車する。

 空中都市への道。雲の上の鉄路。深い森を疾走する列車。いずれも、南米の凝縮された絶景を味わうことのできる鉄道だ。心地よい揺れや車窓を流れては去る景色、そして異国の風が、遠くに来た実感を強めてくれる。

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