“アボリジニアート”という言葉を聞いたことがあるだろうか?
アボリジニの人たちが、描いた絵画のことなのだが、描いている本人たちは絵を描くときに芸術を楽しむという感覚はほとんどないという。

画像: アボリジニの人たちの故郷には、赤褐色の地平線が続く ©MAYUMI UCHIDA

アボリジニの人たちの故郷には、赤褐色の地平線が続く ©MAYUMI UCHIDA

オーストラリアに古くから住む民族、アボリジニ。彼らは文字という表現を持たない「無文字文化」とともに長い歴史を歩んできた。その文化の中で生きてきたアボリジニの人たちにとって、「描く」という行為は、3つの側面を持つ。ひとつは、大地とのつながりを確認する“儀式”として、ふたつめは、情報や知恵を伝達する“手段”として。そして、オーストラリア中央砂漠の過酷な環境で暮らすために、部族間で守らねばならない“掟”として、つまり描くことは「生きるためのバイブル」でもあった。

アボリジニの子供たち ©MAYUMI UCHIDA

その「生きるためのバイブル」に変化が訪れたのは、1971年。アボリジニの人たちが、初めてキャンパスとアクリル絵の具という画材に出会った年だ。かつては砂絵として大地に描かれていたり、ボディペイントとして身体に描かれていたりしたアボリジニアートが、画材という道具に出会ったこと、現在の『アボリジニアート』が誕生した。

一心不乱に絵筆を動かす女性 ©MAYUMI UCHIDA

しかし当時は、人類学や民族学の学者たちが貴重な資料として保管していたため、世間には出回らなかった。博物館の奥でひっそりと保管されていたアボリジニアートが、現代アートとして脚光を浴びだしたのは、ここ30年ほどのことだ。1980年代、アメリカやヨーロッパの美術界でアボリジニアートを“最先端の現代アート”としての評価する動きが生まれ、各地で展示会が企画されコレクターたちがこぞって収集を始めたのだ。

大地と関わる自分自身の喜びの表現でもあるアボリジニアート ©MAYUMI UCHIDA

なぜアボリジニアートは人々を魅了するのだろうか。恐らくそれは、アボリジニの絵画が『ドリーミング』と呼ばれる物語を持っているからではないだろうか。一見すると、抽象絵画のようだが、実はひとつひとつの文様に意味がある。そしてこの文様が紡ぐドリーミングが伝えるものは、創世神話や自然崇拝、精霊のメッセージなど、彼らの文化そのものだ。私たちは、その文様ひとつずつの意味はハッキリと分からないものの、ドリーミングの持つ「何か」を無意識のうちに感じ取り、そこに惹かれるのかもしれない。

イナルパ・ナンガラ 60x60cm 『女性の儀礼』 ©MAYUMI UCHIDA

創世神話や自然崇拝、精霊のメッセージ伝えるアボリジニアートが見たいならば、やはり本場のオーストラリアを訪れるしかない。オーストラリア国内でも、特におすすめしたいのがメルボルンにあるビクトリア国立美術館だ。この美術館は貯蔵作品の点数も多く、見ごたえのあるコレクションがそろっている。アボリジニの人たちの信仰や生活を育んだ、オーストラリアを同時に体験できるというのも、現地を訪れる利点だろう。

画像: 大地とともに生きてきたアボリジニの人々 ©MAYUMI UCHIDA

大地とともに生きてきたアボリジニの人々 ©MAYUMI UCHIDA

一方日本では、2008年に過去最大規模のアボリジニアート展が大阪国立国際美術館と東京国立新美術館で開催された最後に、国内での常設点はのを、国内でアボリジニアートを常設しているところはない。かといって、日本でアボリジニアートが行われていない。しかし、そんなアボリジニアートを間近で見られるチャンスがある。7月4日から兵庫県のギャラリーで行われる『ABORIGINAL ART EXHIBITION 2017』だ。「大地との大切なコミュニケーションを取る方法」を教えてくれるアボリジニアートを、ぜひこのチャンスに見に行ってほしい。

アビー・ロイ 60×60cm 『ブッシュメディズスン』 ©MAYUMI UCHIDA

ABORIGINAL ART EXHIBITION 2017

開催日時 : 2017年7月4日(火)~9日(日)
11:00~18:00(最終日は17:00まで)
会場 : GALLERY 北野坂
兵庫県神戸市中央区山本通1-7-17

問い合わせ先 : アボリジニアート・ギャラリー

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